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泣き叫ぶ掃除機

 安っぽい、あまり優雅でない白円盤が箱の中から姿をあらわした。


 大丈夫かこれ、すぐ壊れちゃうんじゃないのか。

 まあ、とりあえず動かしてみたかったのでちょっとだけ充電した。充電は、ACアダプタを手動でつなぐ感じ。

 10分ほど充電して、その白き円盤を部屋に解き放つ。ゆけ。

 うわあああんうわうわああ、うわああん。

 機械が泣き叫ぶような音を出し、白い円盤は部屋を荒らし回った。いや、掃除した。

 狭いところに入り込むとなかなか出てこれない。壁などにぶつかる音が結構うるさい。これらは、もし本物を買ったら解消されるのだろうか。

 だが、私が本物のルンバを買うことは、この先当分ない。本物だったら、などと考えること自体が無駄なのであった。

 やがて充電が切れて力つきたニセモノを見下ろしつつ、私はこいつとのうまいつきあい方をぼんやりと考えていた。


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