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父、脳出血で倒れる

 先日、父が脳出血で倒れた。

 父は68歳。定年後、これといった趣味も持たず、家でごろごろしていた。

 その日、父は、気分が悪いと言って食事もほとんど食べずに寝た。しばらくして母が様子を見に言ってみると、父は床一面に吐瀉物をまき散らし吐いていたという。

 病院に行くのをいやがる父を無理矢理タクシーに乗せ、病院に向かう母。病院で症状を告げると、急患扱いで即検査、そのときの血圧は230だったという。看護婦によると、これは「生きているのが不思議」なくらいの数値だそうだ。

 そして、脳内で出血しているため、緊急手術が行われた。頭に管を差し込み、そこから出血した血を出すというものだ。とりあえず父は命をとりとめた。しかし、経過によっては開頭、つまり頭をスパッと切って行う大手術が必要かも知れないという。

 この時点で、遠く離れた地で暮らす私は父の状況を聞いた。すぐに実家に帰ろうとした私を母が止める。

 とりあえず今は落ち着いているし、帰ってきてもすることがないということだ。いや、することはいっぱいあるだろうと思ったが、元看護婦の妹が色々とやってくれているらしい。とりあえず連絡を待つことにした。

 父は順調に血圧も下がり、意識もはっきりしてきた。奇跡的、だと思うのだが特にマヒなどもないとのことだ。面会が出来るようになったとのことで、私は実家に帰った。

 病院に到着したとき、父はリハビリ中でいなかった。4人部屋の病室で待っていると、父が戻ってくる。

 ちゃんと歩いてる。少しふらふらしてるが、ちゃんと歩いてる。良かった。本当に良かった。

 手術直後は自分の年齢や住所、家族の名前が思い出せなかったらしいが、徐々に思い出しつつあるようだ。だが、ときどき家族の名前が漢字で書けなかったり、簡単な引き算がわからなかったりする。しゃべる「間」みたいなのも以前とは違っている。ときどき、今の話題と全く違うことをいきなり話し出したりするのだ。

 しかし、命が助かったのだ。それくらいはリハビリである程度回復するかも知れないし、よしとしよう。

 担当医によると、どうやら父の脳出血は、慢性的な高血圧が関係しているかも知れないとのことだ。

 そうか。今回、私が父から学んだことは、高血圧は恐ろしい病気を引き起こす、ということだ。今まで知識としてそういうことはわかっていたが、今回、身をもって理解した。父に続いて、私までも倒れるわけにはいかないのである。

 それから私は、今まで「一応気をつけてるつもり」だった高血圧に、本気で対処していこうと思ったのだった。




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