妻の友達が使っているパソコンに、請求書がどーんと出てきて消えなくなったらしい。
請求書には、「アダルトコンテンツ利用料」などと書かれており、右上の×ボタンをクリックしても消えない。いや、正確には、消した瞬間、次の請求書が画面に現れるのだ。
「ひいっ」
妻の友達、Aさんは慌てた。あわてふためいた。旦那に「こんなの出てるけど、これどうなってんのっ!?」と問いつめる。
旦那から返ってきた答えは「そんなの知らね。自分でなんとかして」とのことだった。
電源ボタンを長押ししても、パソコンの電源は切れなかった。ノートパソコンなので、コンセントを引っこ抜いてもバッテリーがある限り電源は切れない。これも請求書の仕業なのだろうか。恐怖だった。
そして、請求書が画面に出ている間は、いっさいの操作ができなくなってしまうのだ。
Aさんは、考えた。誰かがこのパソコンに入り込んで、このクソいまいましい請求書を表示させている。物理的につながっているのは電話線か、コンセントか。この請求書がコンセントを通じて、近所にもばらまかれたら大変だ。
もちろん、コンセントを通じてデータなどが流れることはない。中途半端な知識が頭をかけ巡り、どんどんどんどん、悪い方に考えていってしまうAさん。
ついには、警察にかけこんだ。
警察は、被害届けを出すことを奨めたらしい。最初は「請求書に表示されてる番号に電話したりしないで、徹底的に無視して下さい。」とだけ言っていたのだが、Aさんがあまりにも大騒ぎするのでめんどくさくなったんだろう。「じゃあ、被害届けを出しておきますか?」と言われて、はい!と即答したらしい。
妻は、「最終的に警察に被害届けを出した」というくだりが気に入っているらしく、何度も何度も楽しそうに言ってきた。おまえ、友達だろう、ちょっとは心配しろよと思ったが、本人の目の前では心配して心の底では爆笑するというのが人間の本性というやつなんだろう。しょうがないやつだと思いつつ、おとなしく聞いておいた。
そして、私はなんとなくわかっていた。怪しいサイトにアクセスして、怪しいリンクをクリックしなければ、そんなわけのわからない現象はおこらないってことを。
おそらく旦那がエロいサイトを見て、「ここをクリックしたらもっとすごいのが見られるよ」みたいなリンクを、愚かにもクリックしたのだ。
私なら、もっと上手にクリックして、いやらしい無料コンテンツのみを安全に楽しむ自信がある。
そんなことを考えて、ふと我に戻ると妻が3回目か4回目か、「それで、警察に被害届けを出したの!」と言っているところであった。
うん、もうわかったよ。もういいよ。と思いながら「へぇー」とうなづく。
だが、その旦那の気持ちはわかる。うちの実家でもパソコンにいやらしいアイコンがデスクトップに張りついとる!と母親が大騒ぎしていたことがある。原因は父親がこっそり見たエロサイトだ。
インターネットエクスプローラの履歴をたぐっていくと、ばっちりエロサイトらしき名前とURLが残っていた。
私は「最近、こういう新種のウイルスが増えているらしいから」とかなんとか言ってごまかした。父親がエロサイトにアクセスした形跡があるなどということを暴露して、いったい何が得られるのか。私の実家に、不要な火種が発生するだけではないのか。
私も男だからわかってる。そりゃあ見たいだろう。けど、ウイルスに感染したら、パソコン内のクレジットカード情報や会員サイトなどのパスワードを盗まれるおそれがあるのだ。
私は無料版のウイルス対策ソフトをインストールして、すでに感染していたウイルスを除去した。あまり悪質なやつではなかったようで、除去したらフツーに動くようになったようだ。有料版のウイルス対策ソフトを入れておけば、感染する前にガードしてくれるのだが、「またおかしくなったら、おまえに頼む」と母親に言われてしまった。いい迷惑である。
話がそれたが、Aさんの件は請求書が表示されて操作不能とのことだったので、近所のパソコン屋などに持ち込んで対応してもらったらいいんじゃないの、と妻には言っておいた。
ほんとはセーフモードで立ち上げてどうのこうのすれば、なんとかなりそうなのだが、私が出て行って対応するのは、んー、めんどくさかった。すまない。
そんなわけで、パソコンよくわかんないけど、いやらしいサイト見たいとか、旦那がこっそり見るおそれがあるって人は、安めのウイルス対策ソフトを入れておけばいいんじゃないだろうか。