「タイマー録音が最大2件じゃあ、話にならないのっ!」
がこん、とビールジョッキをテーブルにたたきつけながら、Nさんは熱く語っていた。
別にこれといって話はないんだけど飲みましょうということでやってきた居酒屋。私とNさんは、お互いのどうでもいいエピソードを繰り出し、アルコールを摂取していた。
ラジオの話題になったときのこと。Nさんは、今でもよくラジオを聴いているという。
私が冗談半分で、「だって、ラジオなんて映像がないですし」と言うと、Nさんは
「それがどうしたのっ」と力強く反論した。
全身で反論しているその態度に、この件に関しては変な冗談を言うのはよそうと私は心に誓った。ちょっと強く言い過ぎたと思ったのか、Nさんは急ににっこり笑ったりしていたが、私はその力強さを見逃さなかった。
ラジカセでも、コンポでも有名メーカーの製品なんかだと、ラジオの機能はおまけ程度に考えられていて、タイマー録音の予約がせいぜい2件くらいしか出来ないらしいのだ。
2件あれば十分じゃないかと思うのだが、そうではないらしい。
「最低、10件ね」
ふぅ~、とビールジョッキから口を離し、Nさんはきっぱりと言い放った。
「10件も」
何をそんなに聴くんだという口調の私。Nさんは私を一瞥すると、特に深夜に面白いのが集中していて、でもそれを全部聴いていると寝不足になってしまうということを教えてくれた。
「面白いのはやっぱ…伊集院光だなあ」
あのデブキャラの。Nさんはついつい深夜の伊集院光を聴いて寝不足に陥るのだそうだ。だから、面白い深夜番組は夜のうちにタイマー録音しておいて、朝の通勤電車の中で聞くのが一番いいらしい。ラジオは耳だけで全てを理解できる、満員電車には最適の娯楽なのだそうだ。
また、総合的に判断した結果、私にはウッチャンナンチャンのなんとかいう番組がお奨めだと教えてくれた。何を判断してそうなったのかは忘れてしまった。
帰宅して、さっそく調べてみる。
たしかに、ラジオのタイマー録音が何件できるかなんて、明記しているような製品はほとんどない。
有名メーカーのものほど、mp3がどうとか、MDチャンジャーがどうとか、音質がどうとか、一般ウケしやすいところをアピールしている。まあ、当たり前だ。
そして、探しまくった結果見つけたのが、TALK MASTER II-S(トークマスター)だ。
製品としては、ポータブルラジオと言っていいだろう。ただし、ICレコーダーとしての機能もある。そして、ラジオを受信して、それをmp3形式でメモリに録音できるのだ。
そして、気になるタイマー録音件数はというと…
高性能AM/FMラジオ受信機を内蔵し、曜日または日付指定方式で最大20件までのタイマー録音が可能。録音ファイルの自動振り分け機能も搭載。
SDメモリカードを増やすと、最大64時間分録音できるらしい。そんなに録音してどうすんだ。
また、パソコンにつないでmp3のやりとりも可能である。このあたりは一般的なmp3プレイヤーなら、どれでも可能とは思う。
本来は、ラジオの語学講座を聞き逃さずに録音するという、とっても真面目な目的のものなのだが、Nさんにはこれで思う存分伊集院光を録音しまくってほしいと思う。
追記:このラジオを注文してしまった。Nさんに見せびらかしついでに、おすすめ番組を聞いてみようと思う。